[Next100 PROJECT – NEXT 100 Voice vol.2]
100年後の理想の未来のために、アクションを起こしていこうというグリーンピース・ジャパンの「NEXT100 PROJECT」。その対談企画「NEXT 100 Voice」ではグリーンピース・ジャパンで事務局長を務めるサム・アネスリーが、さまざまな分野で活躍をする方々がどんな未来を描き、どのような活動をされているかを伺います。 第2回のゲストは、女優業の傍ら、自身のSNSでアニマルライツ(動物の権利)などについての情報を発信し、若い世代から多くの支持を集めている女優の二階堂ふみさんのインタビューです。
© Chiaki Oshima/Greenpeace

1匹のフェレットとの出会いが環境への意識を変えた

二階堂 グリーンピース・ジャパンのインスタグラムは、勉強になることも多く、いつも拝見しているので、お呼びいただいて光栄です。

サム こちらこそ、ありがとうございます。二階堂さんが環境問題に関心を持ったきっかけは、動物愛護からだったんですよね?

二階堂 はい。昔から難民問題や子どもの権利など、人権問題には興味があったのですが、5年前にフェレットと暮らし始めたことがきっかけで動物福祉(アニマルウェルフェア)に関心を持つようになって、生活スタイルや価値観が一変しました。フェレットと暮らす前の年までは、何も気にせず、舞台挨拶で毛皮の服も普通に着ていたのですが、こんなに感受性豊かな子たちの皮を剥いていると思ったら恐ろしくなってしまって。今は保護した子も含めて犬を2匹、猫を3匹、フェレットを1匹と一緒に暮らしています。

サム 保護フェレットというのもあるのですか?

© Chiaki Oshima/Greenpeace

二階堂 はい。犬や猫に比べると安価なので、安易に飼ってしまい、手放す方も多く、保護フェレットの活動をされている方がいらっしゃいます。2021年11月にフランスではペットショップでの動物の販売が禁止になりましたよね。犬と猫に限定されているなど課題もありますが、素晴らしい決断だと思います。一方、日本ではまだペットショップでの動物の販売は当たり前で、疑問を持つ人の方が少ない。それでも「日本もそうあるべきだ」という人も増えていると感じています。

サム サーカスやショーでの野生動物の出演も、世界では禁止になっているところもありますしね。

好きと思う気持ちをアクションに繋げていく

二階堂 動物愛護が入り口だったのですが、学べば学ぶほど、動物福祉と環境問題は繋がっていることが分かり、自分でも何か取り組みができればと思うようになりました。

サム 素朴な思いからスタートすることは大事ですね。日本では「私は何も知らないから」と声を上げられない人が少なくないのですが「動物が好きだから、動物のために何かしたい」「山登りが好きだから、きれいな山を残したい」。専門知識は必要なくて、自分の大切なものを守るために動くという気持ちが重要です。それが「NEXT100PROJECT」で伝えていきたいことでもあるんです。二階堂さんは環境のためにどんなことをしているんですか?

二階堂 基本的なことではマイカップとマイ箸を持ち歩いています。野菜はプラスチックフリーのものを選ぶようにしていますし、ほうきを買ったり、新聞紙でごみ袋を作ったり、洗剤をソープナッツに変えたり、古来の日本の暮らしはすごくサステナブルだと感じています。先日はオレンジの皮とお酢で洗剤を作ってみたのですが、すごく楽しくて、これはみんなにもぜひやってほしい! ただ、都内にいるとできることは限られますよね。例えば雨水を濾過できる雨水タンクもやってみたいけれど、賃貸だから怒られるだろうなとか。それでもいつか循環型の生活にシフトしたいと思っています。

サム 僕は今、ミツバチの巣箱を置きたいと考えています。ミツバチなら人を刺すこともめったにないですし、置くだけで環境のためになる。しかもハチミツ付きです。

二階堂 巣箱、私も置きたいです!

攻撃をするのではなく、寄り添うような活動や伝え方を

サム 個人で活動することはすごく大事ですが、それに加えて社会の根本から変えるシステムチェンジも必要だと思っています。よくメーカーは、使い捨てのプラスチックにしても、「消費者からの需要がある」と言うんですけど、社会全体が変わらないと環境問題は解決しません。

二階堂 そうですね。特に日本は環境に配慮した商品を買えるところが限られていると感じています。例えば、海外だと裸のまま野菜や果物が売られているのが普通ですが、日本はビニールやトレイで包装されているものがほとんどですよね。オーガニックに対する基準も日本はすごく曖昧です。先日滞在したバンクーバーのオーガニックスーパーでは、虫に食われた野菜が売られていて。「うわっ」と思うかもしれないけれど、逆に考えれば「無農薬で栄養がある」ということですよね。本来、あんなにきれいな野菜が育つことがおかしいんです。でも残念ながら、今の日本ではきれいな商品の方が安くて手に入りやすいですよね。

© Chiaki Oshima/Greenpeace

サム もっと色々な選択肢があるといいですよね。例えばオーガニックは大切だけど、生計を立てるだけで精一杯の方に「有機野菜を買って」と僕は言えません。90円で売っている野菜が、有機野菜だと300円、となったら買えるわけがありませんよね。

二階堂 どうしても格差があるなかで、優先順位が変わるのは当然ですよね。色々な立場や価値観の人がいるので、一歩引いて客観的に物事を見ないといけない。例えば私が毛皮を着ていたように、人の考えはグラデーションで変わっていくものだと思うんです。今は何も思っていない人でも10年後には変わっているかもしれない。だから攻撃をするのではなく、寄り添うような活動や伝え方をしないと、分断が生まれてしまうと感じています。自然や動物だけじゃなく、人に対する愛情も同じくらい持っていないと傷つける人を増やしてしまう。

環境問題のためのアクションをもっと楽しもう!

二階堂 環境問題に取り組むようになって、これまでの生活はいかに色々な犠牲の上に成り立っていたのかを知りました。意識し始めるとこれもダメ、あれも食べられないとなってしまいます。

サム 確かにそうです。だから、ほとんどの方は「気候危機を解決するためには我慢をしなくてはいけない」と思っている。でもお肉を例に挙げると、いきなりヴィーガンやペスカタリアン(お肉は食べず、魚介類を食べる人)にならなくてもいい。毎日お肉を食べていたのを週1回にしたり、たまにソイミートに置き換えてみるだけでも十分環境に配慮していることになります。ステーキの量を減らせば、お財布にも体にも優しいし、何の我慢でもありません。

二階堂 確かに考えすぎると色々なことが自分の中で罪の意識になって、人として生きていくのが怖くなります。もっとポジティブに活動を広めていけるといいですよね。

© Chiaki Oshima/Greenpeace

サム 例えば、ファッションデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドさんに北極圏の気候変動を訴えるキャンペーンのTシャツをデザインしてもらったり、フランス人俳優のマリオン・コティヤールさんは我々の調査船に乗って、一緒に南極の生態系の調査に行きました。

二階堂 コティヤールさん大好きなんです。私もぜひ調査に行きたいです!

サム そう、楽しく活動を起こすことは可能なんです。だから、皆さんにももう少しクリエイティブに考えていただけたらうれしいですね。

二階堂 私はSNSで発信するときに、遠い世界のことではなく、みんなに関係していることだという伝わり方ができるといいなと思っているんです。そして、声を上げることは怖くないと思えるようになるといいですよね。それは私も率先してやっているところを見せていきたいです。欧米と日本との動きで決定的に違うと感じることはありますか?

サム 大きな違いはないと思います。ただ、日本で暮らす人は「自分の声には何のパワーもない」と思っている方が多いですね。欧米だとすぐに声を上げたり、デモをしたりする人がいますが、日本では「何も変わらない」と選挙にも行かない。二階堂さんも投票を呼びかけられていましたよね。

二階堂 そうですね。

サム 本当はひとりひとりにパワーや影響力があるものです。だからこそ自分ができることをやってほしい。

二階堂 自然とみなさんが声をあげられる社会になって欲しいと願っています。

ありのままの地球に近づく、二階堂さんが思い描く100年後の理想の地球とは

サム 二階堂さんは100年後の理想の地球のイメージはありますか?

二階堂 都市にも森が欲しいですね。10メートル先に自然があって、動物がすぐそこにいる。生活の中に野生の生きものがいるのが理想です。

サム より緑の多い世界ですね。

二階堂 サムさんはどう思っていますか?

サム 私は明るい世界になると思っています。目の前にある気候危機は本当に大きな問題です。だけど色々な人がその問題に目覚め始めている。アクションを起こせば解決できるのに、既存の利権がハードルになっているというのは皮肉なことです。

二階堂 でもいきなり電気自動車に買い換えるというのもハードルが高いですよね。

サム そうですね。僕はもう一歩踏み込んで、車がいらないような社会コミュニティになるといいと思っています。例えば、今の道路は車が通ることを前提として設計されていますが、そもそも街や村はそういうものではなかった。車がいらないような社会になると、コミュニティ感も生まれてくるし、色々な社会問題は改善できるのではないかと思っています。

二階堂 コミュニティという視点は意識していなかったので、とても興味深いです! 今日お話しを伺って、まだまだ自分にできること、やりたいことはたくさんあるなと勉強になりました。本当にありがとうございました。

© Chiaki Oshima/Greenpeace

対談を終えて

サム)動物福祉やアニマルライツから、気候危機、環境問題まで、二階堂さんの知識の深さ、幅広さには驚きました。また、考え方にはグラデーションがあって、寄り添うように発信していきたいという二階堂さんの思いが、多くの若者に支持をされている理由のひとつだと感じました。

インタビュー中「知るだけで救えることもたくさんあると思います」とおっしゃっていたのが印象的だった二階堂さん。お話を伺っていると、最初から完璧を目指す必要はなく、小さなアクションから始めていくことが大切だと実感しました。皆さんも100年後の地球と子どもや動物たちのために、まずは知り、できるところから少しずつ始めてみませんか?

みなさんは、100年後の地球のために、今日どんな行動をしたでしょうか。みなさんの声をお聞かせください。

投稿はこちら

グリーンピース・ジャパンの活動の進行状況は、メルマガでお知らせします。

© Chiaki Oshima/Greenpeace

二階堂ふみ(女優)

1994年9月21日生まれ。2009年、映画『ガマの油』でスクリーンデビュー。以降数々の映画、ドラマに出演。2020年には、NHK朝の連続テレビ小説『エール』でヒロイン関内音役を演じ、歌唱力の高さが話題に。その年の『第71回NHK紅白歌合戦』で紅組司会を担当した。フェレットとの出会いがアニマルライツに関心を持つきっかけとなり、現在ELLEonlineにて連載中の『FocusOn』では、環境・動物など様々な問題をテーマに掲げ発信している。

© Chiaki Oshima/Greenpeace

聞き手:サム・アネスリー(グリーンピース・ジャパン事務局長) 

イギリス北アイルランド生まれ。17歳の時、高等学校の交換留学で1年間岡⼭県に滞在。その後英ケンブリッジ大学で日本語を専攻し、その間三重県皇學館⼤学で1年間神道学を学ぶ。 大学卒業後、南米やヨーロッパでの教育経験を経て、2007 年に日本へ。以来11年間、NGO「ピースボート」や親を亡くした⼦どもたちを支援する「あしなが育英会」、自殺予防に取り組むNPO「東京英語いのちの電話」の事務局長を経て2018 年12月より現職。趣味は山登り、スキューバダイビング、サイクリングなど自然の中で過ごすこと。好きな場所は南アルプスの甲斐駒ケ岳、八丈島など。

(取材・文:林田 順子)

[Next100 PROJECT – NEXT 100 Voice]
本対談では、グリーンピース・ジャパンが考える100年後の社会のあり方をお伝えしていくのはもちろん、多様な方の声を伺っていきます。私たちと一緒に辿り着くべき’未来への地図’を作り上げる道標となるのは、より良い社会を願う、一人ひとりの強い思いです。

vol.1 水原希子さん インタビュー
vol.2 二階堂ふみさん インタビュー
vol.3 山田英知郎さん インタビュー
vol.4 高橋悠介さん インタビュー
vol.5 小野塚彩那さん インタビュー