国際環境NGOグリーンピース・ドイツとグリーンピース東アジアは11月10日、主要自動車メーカー4社(トヨタ、フォルクスワーゲン、ヒョンデ・起亜、ゼネラル・モーターズ)の内燃機関(ICE)車販売についての報告書『内燃機関車がもたらすカーボンバブル』を発表しました。

世界の自動車メーカーは2050年までに、気温上昇を1.5度までに抑えるための許容範囲を推定4億台超えるICE車を販売すると予測されています。今回調査対象としたトヨタ、フォルクスワーゲン、ヒョンデ・起亜、ゼネラル・モーターズの2040年までのICE車の販売台数は、いずれも1.5度目標のカーボンバジェット(炭素予算)を超過する見込みで、このうちトヨタの超過分は4社中最多の6300万台(注1)に上るとみられます。

日本語説明資料

報告書原文(英語)

報告書の主なポイント

  • トヨタは2040年までに9400万台〜1億1000万台のICE車を販売すると予測される。これは、世界の気温上昇を1.5度までに保つための目標台数を、5500万台(+144%)〜7100万台(+184%)多く販売する見込みであり、調査対象の4社の中で最も超過が大きい。
  • 他メーカーのカーボンバジェット超過分は、ヒョンデ・起亜(+3900万台、+142%)、フォルクスワーゲン(+4300万台、+118%)、ゼネラル・モーターズ(+1300万台、+57%)だった。
  • 2040年までの自動車業界全体のICE車の販売台数は6億4500万台〜7億7800万台と予測されている。これは1.5度シナリオにおける可能な販売台数を3億3000万台〜4億6300万台超えることになる。カーボンバジェットの超過は45〜64ギガトン程度と見込まれ、これは中国全体の年間CO2排出量の3.5〜5.1倍(注2)かつ世界の建築セクターの累積炭素収支に相当し、他のセクターで補える可能性は極めて低い。
  • 2030年までにバッテリー式電気自動車(BEV)は新車販売の52%を占めると予想されている。大手メーカーはゼロエミッション車に移行しなければ、需要変化に対応できた競合他社に市場シェアを大きく奪われる恐れがある。
  • 電気自動車への移行を前提とした自動車メーカーの再評価がすでに株式市場で始まっており、世界トップ12社の自動車メーカーは座礁資産や財務問題により、合計約2兆ドル以上の損失を出すリスクを抱えていることがわかった。

自動車メーカーへの提言

  1. 自動車メーカーは、2030年までにハイブリッド車を含むディーゼル車とガソリン車の新車販売を終了すべきである。
  2. 自動車メーカーは、サプライチェーンを脱炭素化するための措置を講じなければならない。
  3. ICE車からEV車への移行は、労働者の意見に耳を傾け、彼らの利益を保護する形で行わなければならない。


グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、ダニエル・リード

「トヨタは、技術の多様性を確保するために全方位戦略の必要性を強調する一方、明らかな問題点を抱えています。現在の方針のままでは、1.5度のカーボンバジェットを超える可能性は非常に高いです。気候リスクに加え、EVの生産台数が世界的に急激に伸びる中、ICE車頼りのビジネスモデルに固執する自動車メーカーは、市場の縮小や座礁資産を抱えるリスクに直面することになります。日本の基幹産業をリードする企業の一つとして、急速なEVシフトと脱炭素化に取り残されないよう、同社はより積極的な行動を取る責任があります」

グリーンピース・ドイツ 運輸・気候変動担当、ベンジャミン・ステファン

「トヨタ、フォルクスワーゲン、ヒョンデ・起亜などの大手自動車メーカーは、ゼロエミッション車への移行があまりに遅く、地球にとって危険な結果をもたらしています。気候危機が深刻化する中、各国政府はディーゼル車とガソリン車の使用を厳しく禁止する法律を制定しています。従来の自動車メーカーが電動化に失敗すれば、新興のオール電化の競合他社に負け、多大な座礁資産を抱える危険があります」

関連資料

以上


(注1)本報告書では線形移行、S字型移行、合成型の移行の3つのシナリオを分析に用いており、このうち合成型移行を基本シナリオとして想定した。

(注2)2021年の中国の総CO2排出量は12.5ギガトン